<キャラクター>

ジュン・マウント
(12)

小学5年生の男子。成績はいい方だけど、トップクラスではない。最近同級生からいじめを受けていて、去年まで仲の良かったはずの友人にまで裏切られてしまった。生意気な妹にそのことを見抜かれている。父親の影響でかつては大の恐竜ファンだった。

ユージン・マウント(36)
ジュンの父親。山陽大学教授・古代生物学者として恐竜の研究をしている。突然ジュンに、学校を休んで岐阜県の東濃地科学センターへ探検に行こうと誘い出す。ジュンは自分の異変に気づかれたのかもしれないと思いつつ、父の誘いを受け入れる。

オルカ・マウント(9)
ジュンの妹。小学4年生。はっきりモノを言う性格で学校の人気者。しかし兄のジュンは、そんな妹を生意気のかたまりのように感じている。

エズカ・マウント(35)
ジュンの母親。いじめに遭っているジュンの異変に気づき、夫の優司に相談する。

ダイナス
ジュンの同級生。6年生の5月までは親友だったはずなのに、ある日突然ジュンをいじめる側にまわってしまった。

ケビン
ジュンの同級生でシンイチの取り巻きのひとり。ダイナスに同調してジュンをいじめる。

ジョージ
地科学センターの研究員。中肉中背。まったく普通の人だ。分厚いメガネをかけて、頭は額のかなりうしろまで禿げている。

(イラスト・春木ゆう)

プッチ
ブラキオザウルスの少年。地下世界で最初にジュンと出会い、一緒に行動するようになる。最初はティティをおそれて怯えていたが、ジュンと共にいる内に勇気を持てるようになる。

ブラキオサウルス

(小学館『新版小学館の図鑑NEO 恐竜』より)

ティティ
乱暴もののティラノサウルス。暴れ出したら手がつけられない。体はチチの半分ほどだが、筋肉質で強そう。チチはティティのことを「いじわるな奴」だと思っているが、実はティティ自身はみんなと仲良くなりたいと思っていて、ジュンだけがそのことに気づく。

ティラノサウルス

(小学館『新版小学館の図鑑NEO 恐竜』より)

ケラ
長老。体長1メートルに満たない恐竜。鳥の口ばしのような口で、ちょっと間抜けな顔。人間のジュンを受け入れ、自分たちの村にいることを許してくれる。また地下の恐竜世界と地上の人間世界のかかわりについて教えてくれる。

ニウス
チチの先生。モノクロニウスの女性で美人。

ケント
チチの校長先生。ケントロサウルスの男。ケラ長老と共に、地下世界が危機に陥っていることを心配する。

トリケラトプス、モノクロニウス、ケントロニウス

(すべて小学館『新版小学館の図鑑NEO 恐竜』より)

あらすじ

小学五年生のジュンは、今学校でいじめにあっている。そんなジュンの異変を察した父ユージンが学校を休んで探検に行こうと言い出す。目的地はガーデン市の地科学センター。恐竜を研究している優司はすぐそばの化石博物館に用事があるのだという。
そして恐竜の大ファンだったジュンに、「ここにはかつてティラノサウルスがいた」と話し出す。しかしそんなユージンに急用ができ、しばらくセンターの研究員ジョージと一緒に待っていてくれと言い出す。ジュンはジョージに連れられ、地下500メートルの洞窟を見学する。
そこでジュンは、どこからともなく「たすけて」という声を聞いてしまう。そしてジュンはジョージの目を盗み、ひとり地下世界に入っていった。
壁に入った亀裂にしのびこむと、その先で不思議な生物に出会う。それは人間よりも背の低い恐竜・プッチだった。しかもプッチは心で直接会話する不思議な力をもっていた。
ジュンはプッチに連れられ、地上と同じような光と森が広がる地下の恐竜世界にやってくる。ジュンが入り込んだのは、地下に空気を送り込む通気口だったのだ。
2人が進む先には恐竜の村があり、人間を初めて見る恐竜たちに驚かれるが、ケラ長老の許しにより受け入れられる。

ジュンはプッチに連れられて学校に行く。そこでティラノサウルスのティティと出会う。
ティティは凶暴で意地悪だとみんなに思われていた。怯えるプッチに、ジュンは落とし穴を掘ってティティをやりこめてやろうとする。しかしジュンはティティと実際に話し、そんな奴じゃないと気づく。
しかし2人は落とし穴とは別の深い穴に落ちてしまう。穴の底でジュンは、ティティがみんなと仲良くしたい本当の気持ちを知る。そして穴を怖がるティティを背負い、よじ登って脱出に成功する。
ジュンはこの事件によって、みんなにより受け入れられることとなった。その夜、ジュンは恐ろしい声を聞く。それは海の向こうから響く、プッチたちスモール族とは違って遥か古代からの巨大な姿を残すジャイアント族のものだった。 

ジュンはある日、地上からの通気口がシェールオイルを採掘しようとするマウンテンシェル社の工事で埋められてしまうことを知る。
そこでジュンは、ジャイアント族の骨を洞窟に置けば大規模な調査が始まり、工事は中断せざるを得なくなると提案する。ジャイアント族の村に行くのは危険だと反対されるが、ジュンはイカダを作って海を渡ることを決意する。
深夜、ひとりで行こうとするジュンにプッチ、そしてプッチの妹・ララが加勢するという。さらに一度は怖がって行くことを拒否したティティまでがついてきてくれる。4人はイカダで海を渡る。ララの不思議な力でジャイアント族の墓場にたどりついた一行は、襲いかかるジャイアント族から逃れながら再び海を越えてスモール族の村へ帰る。

ジャイアント族の骨をもって地上に戻るジュン。そして洞窟に骨を置いたところでマウンテンシェル社の違法な爆破が行われ、その衝撃でジュンは気絶してしまう。気づくと病室だった。3日も意識不明になっていたのだった。
全ては夢だったのかと思うが、ジュンのポケットには本物の恐竜のウロコと爪があった。そしてトンネルから恐竜の骨が発見され、優司をはじめとする大人たちが大騒ぎしていることを知る。
しばらくして学校に戻るジュンに、いじめていた同級生たちがからんでくる。
しかしプッチたちと大冒険をくりひろげてきたジュンにとってそれはもう、怖いものではなかった。プッチたちと別れたときに言われた言葉がジュンの中でこだましていた。
「戻ってこい、ジュン」