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本当の強さとは身体の大きさではない。優しさと勇気。
いじめられっ子が小さな恐竜と暮らし、本当の勇気を知って立ち向かう。

第一章 新しい世界へ


小学生のジュンが、学校を飛び出して駆けだしてゆく。彼をいじめる同級生のダイナスやケビンを避けるためだ。しかし捕まってしまう。ジュンは早く帰りたいというが無視される。
「親父に似て頭がいいもんな。おまえの親父、大学の先生だろ」
彼らにいじめているつもりはないのかもしれない。しかしジュンはストレスを感じていた。
「父さんはあさってから、化石博物館に行く。ジュンも一緒にどうだ」
ジュンに父が話しかける。ガーデン市にある地化学センターに行こうというのだ。彼の顔にできた傷に気づいているのかもしれない。彼の父は古代生物学者で、恐竜の研究をしている。ジュンも恐竜の模型を何体も持つほど、かつては恐竜のファンだった。学校を休んでもいいという父の言葉にジュンは躊躇するが、一緒に行くことを決める。
翌日、ジュンは父と共にガーデン市にいた。ボーイスカウトで使うデイパックを背負っている。ジュンは化石博物館を見学する。
「ここにはかつてティラノサウルスがいたのを知ってるか」
父が話し出す。ジュンはそっけなく返事をするが、心の中ではワクワクし始めていた。その後、二人は地科学センターに向かうが父に急な仕事が入ってしまう。そこでジュンは研究員のジョージに、地下500メートルの洞窟を見学させてもらう。
その後地上に戻ってジュンは一人休憩する。しかし考えていたのは、地底で聞こえた気がする「たすけて」という声のことだった。

第二章 新しい仲間、新しい世界


 ジュンはジョージの目を盗み、こっそりと地底に戻る。洞窟の壁を調べると亀裂があった。ジュンが中に入ってさらに進むと、得体の知れない何かに出会う。
「だれだ。出てこい」
 ジュンが追いかけると、何かが背中に飛び乗ってきた。振り落とすと、それは言葉を話す小さな恐竜だった。
「ぼくの名前はプッチだ」
「ブラキオサウルスのプッチか。ぼくはジュン。ここにすんでるって、どういうこと?」
 二人は穴から光の中へ出る。地底なのに昼間のように明るく、湖や山、森林が広がっていた。ジュンがやってきたのはこの地底に空気を送り込むトンネルだった。そして恐竜たちは口ではなく心で話す不思議な能力を持っていた。ジュンはプッチに案内され、恐竜の村に到着する。恐竜たちは人間であるジュンに驚くが、ケラ長老などに受け入れられる。

第三章 地底の世界


プッチはジュンを自分の通う学校に案内する。その途中、身を隠そうとするチチ。そこには意地悪なティラノサウルスのティティがいた。
ジュンは自分もいじめられていることを棚に上げて、プッチに戦うようアドバイスする。プッチたちはジュンのアイデアで、落とし穴を掘る。
ところが実際に話してみると、ティティがそんなに悪い奴ではないとジュンは気づく。ティティは落とし穴をよけて走るが、ジュンと共に別の深い穴に落ちてしまう。穴の底で話し合う二人。なぜプッチたちをいじめるのかというジュンの問いを、ティティは否定する。
「一緒に遊びたかったんだ。友だちになりたかった」
そこへ助けに来るプッチたち。怖がるティティを背負い、ジュンは穴をよじ登ってゆく。その後、学校ではジュンがティティを穴に突き落としたことになっていた。学校にティティの父母がやってくる。しかし彼らはジュンを疑っていなかった。むしろティティと友達になってくれと頼まれてしまう。
学校ではケラ長老による授業が行われる。それは恐竜が地底で生き延びることになった歴史についてだった。その夜、ジュンは恐ろしい吠え声を聞く。それは海の向こうから響くジャイアント族のものだった。それは小型化したプッチたちスモール族と異なり、地上にいた頃のままの巨大な恐竜たちだった。
 

第四章 地底を救え


ジュンはケラ長老と話す。この村に空気を送り込んでいる穴が、地上の工事で埋められようとしていることについてだった。そこでジュンが工事を止めるアイデアを披露する。
「大型恐竜の骨を置くというのはどうでしょう。この世界に通じている洞窟の反対側に」
「骨をおくとどうなるんじゃ」
「洞窟で恐竜の骨が出たら、町中が大騒ぎです。何年もかけて発掘調査があります。穴を埋めるなんていわなくなります」
しかしスモール族の村に大型恐竜の骨はない。そこでジュンは地底の海を渡り、ジャイアント族の骨を取るという。危険だと長老は反対する。それでもジュンは自力でイカダを作り、誰も渡ったことのない海を渡ると決める。話を聞いたプッチは共に行くと言うが、ティティは怯えて拒否する。
深夜、ジュンとプッチは浜辺に向かう。そこへプッチの妹ララも勝手についてくる。さらにティティの姿もあった。海上では水中に棲む恐竜に襲われ、ジュンは海に落ちてしまう。
「戻ってこい、ジュン」
ジュンはプッチの声を聞く。必死で泳いでイカダに戻る。ついに彼らはジャイアント族の岸にたどり着くと、ララが伝え聞いた伝説の記憶を元に、ジャイアント族の墓場に向かう。ジュンは骨を発見できた。そこでイカダに戻ろうとしたとき、背後から巨大なティラノサウルスが襲いかかる。すんでのところでイカダに乗った4人は湖にこぎだす。日が沈み、夜の湖をアーケロンに導かれ、スモール族の村に帰り着く。そこでは村のみんなが心配して待っていた。

第五章 地上へ


ジュンは地上に帰ることをチチに伝える。
「さびしくなるよ。人間の友だちなんて初めてだったもの」
ジュンはプッチに、自分のかぶっていたヘルメットをプレゼントする。再び案内され、洞窟に戻るジュン。ジュンは穴の端に骨を置く。そのとき、地震がおきて穴が揺れ頭をぶつけたジュンは気絶してしまう。
気が付くとジュンは病院のベッドに寝ていた。ジュンは恐竜の村で数日すごしたはずだが、地上では3時間ほどしか経っていないという。しかし3日もの間、ジュンは意識を取り戻さなかった。さらに1週間入院して、ジュンは東京に帰る。退院するとき、看護師がジュンにポケットに入っていた恐竜の爪とウロコを返す。
「これ、きれいね。何なの」
「恐竜のウロコと爪です。どちらも本物」
 ジュンの言葉を冗談だと思い、看護師は笑う。しかしジュンの父はずっと洞窟を調べていた。ティラノサウルスの骨が出てきたためだ。
「壁がくずれて骨と歯が出てきたんだ」
洞窟は以前よりふさがってしまったようだが、通気口としては問題ないと思われた。2週間後、ひさしぶりにジュンは登校する。ポケットの中にある何かを大切にしているジュンを見て、ダイナスたちが奪い取ろうとする。しかしジュンはもう以前のジュンではなかった。
〈何かあれば知らせてくれ。すぐに助けに行ってやるからな〉
ティティの言葉を思いだし、ジュンはダイナスに戦いを挑み、ジュンが圧倒する。夜、ジュンが寝る部屋に父がやってくる。父はジュンが持っていたラプトルの爪を見つける。
「模型じゃない。本物だよ」
 調べたがる父に、ジュンは自分が大人になってから調べるという。
「おまえも古代生物学者になるのか。父さんと競争だな」
ジュンは研究者になって、もう一度地底世界に行くことを決意していた。また心の中にあの声が聞こえてくる。
「戻ってこい、ジュン」